失はれる物語
2011年 08月 23日

失はれる物語
- 乙一
- 角川書店
- 580円
書評

切なくて 優しい 短編集。
ホラーのイメージも強い作家さんだけど
その発想力の凄さには いつも驚かされる。
温かい気持ちになる作品が詰まった 宝物のような作品群。
息子が感想文で悩んでいる。
何を書いたらいいのか解らないという。
母はこんなに 本も感想文書きが好きだというのに。
推理小説やホラーとかならたまに読む 中学生。乙一も読んだことはある。
そんなうちの息子。
で、薦めたのがこの本。
その 乙一さんの書く 別な世界。温かで切なくて 優しい物語。
どの短編も大事に置いておきたい宝物のような作品だ。
表題作は 事故に遭った主人公が
腕の一部だけの感覚で世界とつながっているという話。
自分に置き換えると どんなに心細く恐ろしいかと思う。
人間の五感はどれも大事で必要だけど
残ったどれかで 必ず誰かとつながることができる。
妻はその腕に 指文字を書き
主人公はわずかな指の上げ下げで答えるのだ。
そして ピアニストの妻は 腕を鍵盤にみたてて
演奏を始める。
腕から主人公の脳に
音楽が流れ出すのだ。時に優しく、時には悲壮に。
音楽は雄弁に妻の心情を伝え、それは時には妻さえ意図しないところまで表現している。
暗闇で他の感覚もなく 妻との唯一のコミュニケーションに
かすかな光を見出し・・・・
けれど いつまでそれは続くのか
そして いつしか 妻の気配が消えた時
主人公はなにをよすがに生きていけるのか
人間の「感覚」と「感情」について
そして「生きるために必要なこと」は何だろうと
そんなことを考えながら
とても切なくなる一編です。
# by nazunakotonoha | 2011-08-23 01:08 | 「感想文」













































